THE WAY

星の旅人たち

 

引っ越しを終えて、頭が真っ白な時に新しい風と光を感じさせてくれたのが、THE WAY 星の旅人たち です。

 

スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かって数百キロ歩く巡礼の道があります。

出発地にもよりますが(おもにフランスから出発らしい)、数か月をかけて歩く過酷な旅となり、しかし世界中から巡礼者が訪れているそうです。

 

 

さて、この映画の主人公トム・エイブリー(マーティン・シーン)は成功したアメリカ人眼科医です。安定した毎日の繰り返しにほぼ満足していますが・・一人息子の奔放な放浪生活だけが唯一の心配事です。

 

ある日、突然フランスから息子ダニエル(エミリオ・エステベス)の悲報が届き、唖然としたまま現地に旅立つトム。

 

小さなフランスの田舎町で悪天候による事故死という現実に愕然となります。

 

残ったのは大きなリュック一つだけ。ダニエルはサンティアゴへの巡礼に出発して一日目に嵐に巻き込まれたのです。

息子の想いを遂げるため・・あるいはなぜこの旅を選んだのか知るため・・トムはリュックと遺灰を背負って巡礼の道の一歩を踏み出します。

 

 

自分の人生より眼科医としての人生を歩んできたトムは、ここでも自分のためではなく息子のための巡礼といわんばかりの、頑なな心と態度で黙々と歩きます。

それでもお人よしのオランダ人ヨストと出会い・・美人だが癖のあるカナダ人のサラも加わり・・・高慢な作家のアイルランド人ジャックまでが道連れに。

 

一人で巡礼をしているということ自体、何かを抱えたり背負っている者といえるだろう。そんな者同士小さな軋轢を繰り返しますが、過酷な旅は助け合わなければ乗り切れません。絆が徐々に深まっていく4人・・・。

 

 

スペインの雄大な素晴らしい風景と共に、変わりゆく心情がじんわりと心に沁みわたってきます。

 

この作品の監督でもあるエミリオ・エステベスは、若い時今風でいうちょっと残念な好青年役が非常にうまく、そんな役でも品の良さ、聡明さは隠しきれずで、お気に入りの俳優さんでした。思った以上に素晴らしい監督になって、ちょっと嬉しいです。

マーティン・シーンは実父であり、彼のための映画だとよく伝わってきますが、品の良さは父親ゆずりのようですね。

 

 

この映画の登場人物も完璧ではないが根は好人物・・という人柄を描いていて、そういう人間同士のつながりにこそ醍醐味があると教えてくれているようです。  

 

マーティン・シーンがインタビューで、巡礼の旅は人生そのものだと語っていましたが、逆をいえば・・人生は巡礼の旅とも言えるかも。どの瞬間どの道も乗り越えたり、ただ黙々と歩いたり・・・そう考えるのも愉しく思えます。

 

 

 

 

サン・ジャックへの道

Saint Jacques...La Mecque

 

実は、サンティアゴへの道の映画がもう一本あり・・サン・ジャックへの道というフランス映画です。

 

この映画は、これまた素晴らしい女性監督コリーヌ・セローの2005年の作品です。(彼女は「赤ちゃんに乾杯!」という時代を先読みしたというか、時代を変えた画期的な作品を30年ほど前に作っており、アメリカでリメイクされましたが、フランス版で観てほしいかも・・・)

 

さて、こちらの巡礼は仏風エスプリの効いた辛口でシュールな素敵な作品となっています。ちゃんとじんときます。

 

そして、こちらは最初からグループのツアーとなっていて、また個人とは違う人間関係を味わうことができます。わけありなのは星の旅人たちと良い勝負です。

 

皆さんお忙しいとは思いますが・・少し余裕がある時に、2つの巡礼を見比べてみて、どっちに参加したいか思いを巡らせてみてみるのは、いかがでしょうか?

 

 

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